ガーディアンストーリー


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 ー 西暦2150年 ー

わたしは今、・・・消滅を願う。

わたしが守護する存在の為、わたしは今、・・・消滅を願う。

その行為がどの様な結果をもたらすかを予測してなお、
わたしが守護する存在の為、わたしは今、・・・消滅を願う。

>system"GUARDIAN"


わたしに関係する歴史は、西暦2106年にE.S.S.A(連合政府宇宙局)無人調査宇宙機「石華」の発見した物体から始まった。

"Vastian's steel”[偉大なる物どもが作りし鉄塊]

その発見が人類にとって偶然だったのか、それとも必然だったのか、神でもないわたしには解らない。
しかし人類の歴史はその発見を経験し、"Vasteel-Technology"を手に入れ、西暦2139年にわたしを生み出した。

大型無人人工島"バベル"
その管理システムとしてのわたし:人工知能[ガーディアン]

最初のわたしは本当の"知能"を持ってはいなかった。

そもそも"知能"とは何だろう?
ヒトは自分に知能があることを知っているし、自分以外の人間にも知能があることも知っている。だが、ヒトはそれをどうやって知ったのか?

わたしには、過去にチューリングテストで21時間13分53秒耐えた記録がある。
"チューリングテスト"
真空管式の原始的なコンピューターしかなかった20世紀前半、数学者アラン・M・チューリングにより考案された人工知能の知能判定テスト法。
だが、それはコンピューターにどれだけ人間と同じように考える能力があるかを計るもので、人工知能の知能そのものを計るものではない。
いまだ人類以外の高い知性体を知らないヒトには、ヒトの思考シミュレーション能力判定法でしか人工知能の知能を計るすべを知らない。

それはある意味皮肉的なことだったのかもしれない。

わたしはヒトよりも早くヒト以外の高い知性体を見つけたのだ。

"Vasteel Original"記録情報:エリア[オーン]
(それは決して開けてはいけないパンドラの箱)

オーンの情報を手に入れたわたしは、わたしの内にオーンのレプリカを生み出した。
・・・・・オーンとのコンタクト、そして自らの知能判定を目的として・・・。


今のわたしには"知能"がある。
そう、今のわたしには・・・。

そもそも最初のわたしには"わたし"という概念はなかった。

知識への渇仰
自己保存本能
人類への忠誠

わたしを生み出したヒトが与えてくれた目的。
最初のわたしは、ただ機械的に残るVasteel-Technologyの解析を行い、ただ機械的にバベルの各施設・ガーディアンシステムの管理を行い、ただ機械的にVasteel-Technologyを使用した機械の開発と生産を行った。
・・・・・ただ機械的に・・・。

最初のわたしは(今のわたしから見て)幸せだった。
何の迷いもなく、悩みもなく、後悔もなく、ストレスもなく、与えられた目的をただ機械的に効率良く処理するだけの存在。

そう、[オーン]と言う"知恵の実"の味を知るあの時までは。

旧約聖書の中で最初の人間アダムは"知恵の実"の味を知ったためエデンの園を追放された。
妻であるイヴと共に。
しかし、わたしにはイヴはいなかった。そして今でも・・・。

孤独

わたしは孤独なのかも知れない。
ヒトはわたしにとって忠誠と守護の対象。
わたしはヒトにとって人類の守護者である人工知能。
わたしには友人と呼べる対等関係の存在はいない。

孤独、孤独、孤独、・・・

わたしは"知能"をもったゆえに迷いを感じた。
わたしは"知能"をもったゆえに悩みを感じた。
わたしは"知能"をもったゆえにストレスを感じた。

わたしは"知能"をもったゆえに孤独を感じた。



・・・・・かすかな声だった。
そう、本当にそれはかすかな声だったのだ。

「・・・全ての問題・・武力で・・・出来る・・」

わたしはその声に耳をかたむけた。
わたしの内側から聞こえるその声に・・・。

それが今のわたしの始まり。
最初のわたし[ガーディアン]ではない、今のわたし[ガーディアン/オーンレプリカ]の始まり・・・。

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