それは、わたしの見たことの無い機体だった。
外見は・・・そう、まるで20世紀後半にその存在が囁かれたUFOの様に厚みの薄い球状。
UFOの正体については「地球外知性体説」「軍の秘密兵器説」「プラズマ説」などなど、それこそ無数の説が飛び交ったがどれもその正体を完全には説明できないまま西暦2009年のエジプトでの目撃を最後にUFOは完全に現れなくなった。
「まさか1世紀ぶりに・・・」
などと思うほど空想家ではないわたしは即座に機首を上げ、それとの距離を置き臨戦態勢を取った・・・が、それの反応速度は速く、1発・・・機体腹部にレーザーの攻撃を受けた。
「・・・くそ」
不意の攻撃だったとはいえ、攻撃を避けきれなかった自分の未熟さに軽く舌打ちをし、即座に被害状況をチェク。
「思ったほどは無い」
幸か不幸か命中箇所は外付けサブ燃料タンクの制御部分で、完全にその機能は停止。
爆破ペレットで強制排除し機体重量を軽くしたが、結果的に行動可能時間が残り約5分弱になってしまった。
「状況」
敵は2機でこちらは1機。
ジェイがすぐに駆けつけてくれるとしても到着までざっと1分30秒・・・その後2対2の状態に持ち込めても機体の残り燃料から約3分強が限界。
「明らかに・・・不利ね」
などと言っている側から無数のレーザーが飛来する。
それは"不利"と呼ぶよりも"絶望的"と呼べる状況だったのだが、そこに"恐怖"ではなく"高揚感"を感じ微笑んでいる自分がいた。
「危険な女だわ」
危険な笑みを抑えつつドックファイトに意識を集中する。
しかし、敵の連携攻撃は巧妙且つ正確で、自分がどんどん追い込まれていくのを感じる。
「何なのよ、こいつら」
わたしの戦闘機乗りとしての腕は一級品。
今までそれが自惚れではないことを証明する自信は持っていた。
だがここまで弄ばれるとその自信が揺らいでしまう。
「わたしはそんな安っぽい女じゃない!」
気迫を込めて反撃するも、さすがに2対1では決定打を与え切れない・・・。
敵の連携の隙を突いても今一歩のところですかさずもう1機がサポートに割り込んでくる。
「!」
逆にターゲットロックされた!?
刹那、レーザーが飛ぶ。
大き目のスペースダストを盾に辛うじて避けるも束の間、即座にもう1機が左舷に回り込む。
「限がない」
休み無く続く攻撃・・・。
さすがに死神の足音が聞こえてくるかと思えた時、敵の連携リズムにわずかの隙が生じた。
「何!?」
本当に些細な隙だったが反射的にその隙間に反撃を行う。
だが十分な狙いをつけていない攻撃は当然のごとくさらりとかわされる。
しかし、避けた敵に別方向からのレーザー攻撃が直撃した。
「無事か?」
「遅い!」
待ちかねていた声にわたしは冷たく応えた。